気まぐれエッセイ@メキシコ

不定期に適当な文章をつづっていきます(現在バヨ中心)

長い長いマンドリン調整の旅 楽器の話その2

 ずいぶんと間が空いてしまいました、ごめんなさい(南国のほうの更新が増えていたため)。

 

 クリスマスにもらったマンドリン(正確にはバンドリン)、最初は指が痛いしな~、とか思いながらぼちぼち弾いてみたりしてたんだが(左の指が痛くなったら開放弦で右手の練習したり、ケーナに切り替えたり)、不思議なことにある日突然、指が痛くなくなった。おおおお、なんだなんだ、今までは5分も弾いたら痛くてたまらなかったのに、いくら弾いても痛くならない! いつまでも弾ける! ……って言ってもやっぱりいろいろと限界があって24時間弾いてるとかはできないけどw

 

 現在の私の左の指。ぼこぼこw

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 最初は、弦が高すぎる(指板と弦の隙間が大きい)とか、2本セット(コースというらしい)の弦のあいだが離れすぎてない? とか、いろいろ不満があったんだけど、だんだん慣れてくると意外と何とかなるもんで。

 年末に、いつもお世話になる楽器工房に電話かけて、マンドリンも調整できますかって訊いたら、できるけど今よその町に来てるから1月まで帰らないと言われて、まあそれまでは我慢するかと思ってた。でもそのあいだに慣れてきちゃったら、うーん、どうしようかなあ、本当にできるかどうかちょっと信用しきれないところがあるし(できなくても安請け合いするのがメキシコ人)、下手にいじられておかしくなってもイヤだしなあ。

 などと思っていたんだが。先週のある日、突然、第1弦(いちばん細い、向かって右端のE線)がおかしくなった。ビリビリ雑音が入る。どうも、フレットに弦が触れているっぽい。反対の第4弦のほうは高すぎるのになあ……。でもこれは修理に持っていくしかない。

 それでとうとう覚悟を決めて、土曜日にいつものお店に持っていったんだが……閉まってる。この店、開店時間書いてあってもその通りに開くことがないんだよね(メキシコあるある)。で、電話をかけても留守電にしかならない。どうしようかねえ。とりあえずメッセージを送って、いつなら開いてるか知らせてくださいと書いた。

 が、そこでダンナが、あの辺にギター工房って書いてあるところがあった気がする、と言い出す。どこよ? サンニコラス地区の、何となくあの辺、と心もとない記憶だったけど、私も、ああそういえばこんなところに?って思ったことがあった。いっぺん行ってみよう、ってことになって、おぼろな記憶をたどっていくと、あった! うーん、腕前はわかんないけど、ちょっと訊いてみるか。

 

 住んでいる家の横っちょにお店がくっついてる形で、小さいカウンターがあり、右手にはガラスケースにマンドリンがいっぱい! おおお~! でも、みんなちょっとずつ形が違ってて、4弦それぞれ3本ずつのとか、胴体の形が違うのとか。そしてお値段はどれも2000ペソ前後。けっこうするなあ。私のは(友人から聞きだしたが)それの半分弱だったので、けっこうお買い得だったのかも(お店が仕入れたものの予定通りに売れずに残ったものだったらしい)。

 さて、マンドリンを見せて弦高の調整を頼む。触れちゃうところはあげて、でもそれ以外はちょっと低めにしてほしい、ついでに各コース(2本弦のペア)の間隔も……でもこの辺のマンドリン見てると、みんなこんな感じですねえ? これがスタンダード? と訊いたら、やっぱりそうらしい。そうかあ。

 でもねえ、私の指がやわすぎるのかもだけど、2本を押さえようとすると指先が弦のあいだに入っちゃって広がって、ちゃんと押さえられない……。と訴えると、まあその辺は個人の要望で何とでも調整しますと言うので、それもお願い。修理費はたったの120ペソ。やっす!

 

 ついでに、おじさんに、このマンドリン、素性が知れないんですけどと訊いてみたら、いろいろ眺めて「うん、手工芸品だね」とのこと。作製者のラベルが落ちたんでしょうか、と尋ねたら、意外な答えが。

 いわく、安い楽器にはラベルをつけるんだけど、楽器店に納品するような手をかけた楽器にはラベルはたいてい貼らないものなんだ、と。

 えええ~! それ、逆じゃないんですかね? と言ってみたけど、お店としては、自分の側で適当なラベルを付けて売りたいので、作製者にラベルなしでと注文するんだって。作る側はその要望に応える形でラベルなしで納品。うーーん、それって偽装とか詐欺にならないんかねえ? ま、そこらのバイオリンにストラディバリウスとつけるわけじゃないからいいのか?

 まあでも、そんなら私のマンドリンにラベルも何にもついてないのは納得。ええと、私のギターには作製者のラベル、ついてるんだけど、これ安もんなんですかね? ってのはちょっとまた今度の話にして。

 

 土曜日だったのとちょっと仕事が立て込んでいるので(と言われたその本当の理由はのちに判明するw)、月曜の午後になりますと言われ、月曜午後は行けなかったので、火曜日に受け取りにいった。

 ま~120ペソだからしょうがないけど、弦コースの間隔、詰めてないなこれは。と、見てすぐわかったけど、ま、いいか。そこはどうしてもってんじゃなかったしね。とりあえず弦高が全体に低くなって、雑音出てたところは直ってるっぽいし。

 と、家に持ち帰り、調弦していたら……びょ~~~ん!とG線(いちばん太いの)が一本切れた~~。ああ~、もう~~、久しぶりに(三日ぶりにw)弾けると思ったのにぃ~。まあ1本は残ってるから、何とかなるけどさw

 

 しかしだ、調弦を終えて弾いてみると……うーーーーん(・ω・) たぶんこれ、ブリッジの弦の溝を深くしただけだよね。基本はそれでいいんだろうけど、溝の形が悪いのか、弦の響きが……これはひどい。ダメだこりゃ。

 そもそもこのおじさん、受け取りに行ったとき、ブリッジの位置がかなりおかしくなっていたことについて、例の「1オクターブは弦の長さが半分」理論で、こことここを測って、とか言い出したんだよね。あー知ってます知ってます、理論上はね、でもチューナーで測ってみたら実際にはそうはなってないんですよね、と、このブログで解明したとおりに説明したら、でもチューナーってテレビの音とか拾っちゃうからじゃない? とか言い出す。いやいや、なんかもういいです、って帰ってきたw

 おじさん、一族みんな、リュートマンドリンウクレレなどの小さめの弦楽器を作るんだと言ってたけど……。と、ちょっと不思議に思っていた。これも、のちに謎解明するw

 

 とにかく、これではあかん、やっぱりなじみの工房に持っていくしかない、ともう一度電話かけたら、今度はつながった。やっと帰ってきたところで、私のメッセージは見たけど、サンニコラスの弟の店に持っていったって聞いたから返事しなかった、ってwww あれ、弟かいwww

 で、実はそうなんだけど、そのあと弦が切れちゃったので交換お願いできますか、あと、ちょっと問題が……って言って、水曜に、往復タクシーを使って(週末まで待てなかった)行った。店は相変わらず閉まってたけどw、電話かけたら通じて、3分で行くから待って! と言われ、そのあいだ格子越しに、あ、ここにもマンドリンが一個ある! 私のと同じタイプ! とか、あ、マンドリン教則本がある! あとで見せてもらおう! とか思いながら待った。

 おじさんが来て(ダニエルさん、この人とは不思議なご縁があるんだが、その話もまた今度)、マンドリンを見せて、弦が切れちゃったのと、弦高を下げてもらったんですけど……言いにくいんですが(なんしろ弟さんだしなw)、音色がね、と訴えたら、楽器を眺めて音を聞いて、うんうんと。

 ダニエルさんの話によると、うちの一族は全員楽器作りの家系なんだけどね(って弟さんも言ってましたな)、実はあの弟だけは、ゴニョゴニョでね(あはははは、やっぱりか!)、あの店に持ち込まれる修理はたいていボクがやるんだけど、今回留守にしてたもんだから、弟が自分でやっちゃったんだね(だから仕事が立て込んでるとか言ってたのか!)。

 弦高を下げるには、こんなとこ削っちゃダメ、ブリッジを外して、裏を削るのが基本だけど、コースの間隔を狭めるならついでだから、全部作り直します。ってことでお願いして、弦の張り替え(セットしかないから、と言われて8本4コースかと思ったけど、2本セットのことと後に判明)とナットとブリッジの作り直しで485ペソ。まあそのくらいはやっぱ、するわな~。

 そのあと、外から見てたマンドリン教則本を見せてもらった。マンドリンは、下ろしてもらったら胴体の形が微妙に違うタイプだった。いろいろあるんだねえ。これはエストゥディアンティーノ(メキシコの学生とかが集まってやる民族音楽のバンドみたいなの)で使うからと注文されて作ったけど残っちゃったヤツなんだと。やっぱそんな感じで売れ残るんかね。

 教則本のほうは、最初の数ページで構え方とか弾き方が簡単に説明してあって、あとはメキシコの有名な曲の歌詞とコードのみ。これ、知らん歌だったら使えないじゃないか。まだそんなレベルに達してないので、と却下。

 

 ところでダニエルさんも、弟さんから私がマンドリン持ち込んだって話を聞いて、「あーあの人ね、何をしてる人かは知らないけど、うちの上客だからね」って弟に言っておいたんですけどね、とか言ってたw 「何をしてる人」かは、うふふふと笑ってごまかしておいたw

 

 さて、二度目の修理、翌日の午後に取りに来てと言われていたので、じゃあ4時に行きますと言ったら、3時半から店にいるから! と言ってたのに、4時少し前に行ったら、店のドアは開いてて音楽がガンガン鳴ってるけど、手前の格子が閉まってて、ダニエルさんいない……。まあ午後の店開けるのは4時だから、と4時15分まで待って、来ないので電話かけたら、4分で戻ります!ってw 毎度のことだな。

 で、見事に弦の間隔と弦高が私の希望通りになったマンドリンが。ただ、ナットの糊付けしたとこだから、あと24時間は調弦しないで、とのこと。了解っす!

 これが、その調整後の弦の間隔。

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 うおおおお! これは弾きやすい! 修理に出す前の写真も撮っておけばよかったんだけど、この写真でどうにか見えるかな?

 

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 8本がほぼ等間隔。これでスタンダードらしいので、本当はこれで弾くべきなんだろうけど、これだと、

  1. 弦を押さえると2本のあいだが開いてしまい、うまく押さえられない
  2. コースとコースのあいだが狭いので、押さえている弦の隣の弦に触れてしまうことが多く、指を押さえたままにしにくい
  3. 右手も、コースの2本だけを弾きたいのに、つい隣の弦まで弾いてしまうことがある

 まあ3は練習でだいぶ克服してたけど、1も指先が硬くなることでだいぶマシにはなってたけど、2も練習あるのみなのかもしれないけど……。

 弦を詰めてもらうことで、すべて解決した! 

 そして弦高も、これは比較画像がないのでわかりにくいでしょうが、

 

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 このあたりの弦高、調整前は4mmくらいあった。太い弦はまだしも、細い弦はマジで指に食い込むって! 低くなって、実に楽々と押さえられるように。

 

 ……あれ? 24時間置いて調弦してみて、最初はなんかあんまり響かないなと思ってたところも、だんだんになじんでくるのか、また元通りのいい音が出るようになってきたんだが……。第4弦の第2フレットと第11フレットを押さえたときだけ、その下のフレットに弦が触れてしまってびりつきが~(>_<、) そして、第1弦の開放弦も、びりつくわけではないけど、フレットを押さえたときに比べて響きが悪い。ううう~~~む。

 

 はぁ~、三度目の正直。ダニエルさんに電話かけて、土曜日、お店開いてますね!?と確認して、持ってった。今度は、開いてたw 第4弦のびりつきは明らかだけど、第1弦の響きが悪いなんて、言いがかりと思われるレベルかも……と心配してたけど、弾いて見せると、すぐに、ああ、と頷いてくれたのでほっと一安心。

 で、その場で、チェックが始まる。ためつすがめつ、あっちこっちから眺めて直角定規を当てて、それから弦をすべて緩めて、4本ずつに分けて両側にぐいっと広げて指板から完全に下ろした状態にして、テープでサウンドホールの端に固定する。ブリッジは固定されてないので、この時点で外れてるんだが、その端をナットに当てて、木槌でこん!とやると、糊付けされてたナットもボロっと取れた。ブリッジを、そんな工具みたいな使い方していいんかい~!

 完全にフリーになった指板とフレット。そこに、ダニエルさんはでっかい平たい金属やすりを当てて、ずい~っこずい~っこ。ひぇぇぇぇぇ、そんな方法でフレットを平らにするの!? と内心ビビりつつも興味津々で眺めてたら、今度は柔らかい布を巻いた小さな台にネック部分を載せ、さっきの木槌でフレットをガンガン叩きはじめる。ひぇぇぇぇぇ~~~、楽器ってそんなすさまじい衝撃与えていいものなの!?

 もちろんネック部分だからとか、楽器製作する人だからちゃんとわかってやってるんだよね。何にしろ面白くて、わくわくしちゃって、もう弟子入りしたいくらいだったw 楽器の演奏は、楽しいけどどう頑張ったってプロレベルには遥かに遠い。楽器作製なら、思う存分自分の心地よい音を追及して、まあでもやっぱりプロにはなれないだろうけど、別の意味で楽しいだろうねえ~。やりませんけどねw

 

 でもまだちょっと手間がかかるから、午後に来て、と言われて、午後行ったら、はい、出来上がってるよ。今度こそか! 前は弦高が高かったので、フレットのごくわずかなずれはたいして問題にならなかった。弦高をできるかぎり下げたことで、フレット同士のコンマ数ミリのずれでも雑音が出るようになっちゃったのでした。違う作業だったので、150ペソ。ついでにマンドリンのソフトケースを注文する。それも払ったけど、届くのは再来週くらい。まあ、急がないし。

 で、家に帰って、うんうん、ちゃんときれいな音が出るよ~、嬉しいよ~、と調弦してたら……びぃぃぃぃん!と、第1弦が切れた……。うそでしょ……(・ω・)

  そのとき、土曜の午後3時54分。土曜の店が閉まるのは4時。泣きながら(比喩)ダニエルさんに電話した。もう、嫌われそうだよw でもダニエルさん、今日は無理だけど明日お店開けてあげるから、一度電話して、と言ってくれた。日曜はお休みですよね? と言ったんだけど、うん、でも弦替えるだけならすぐだからやってあげる、とのこと。ありがと~~~~~!

 

 というわけで、今朝、電話して、そしたら、弟の店のほうで(うちから近い、5分くらい、ダニエルさんの店は遠い、15分くらい)という。了解ですッ! というわけで、またまた100ペソで弦を張り替えてもらい、や~~~~っと、完璧なマンドリンに。

 ちょっとね、新しく張ったばかりの弦、調弦するの怖かったw また、思いがけないところでびーーーん!と切れるんじゃないかって気がして。でも、大丈夫だった。ただもしかすると、糸巻に不具合があるのかも? 切れる直前にも、巻きあげてたのにいきなり2度ほど下がったんだよね。弦がしっかり巻けてなくてずれちゃったかな? と思った直後に、びーーーん!だった。

 でもとにかく、今は安定しているので、しばらくは大丈夫。のはず。

 

 めっちゃ弾きやすくなった、世界でたった一つのw私仕様のマンドリンです。

 あと、ブリッジも斜めってなくて、ほぼ水平で、ちゃんと調弦でどのフレットも音が合う。やっぱりこうあるべきだったんだよなあ。念のため、今の弦の場合ではあるけど、距離測っておこう。すると、あらら?

 第1弦の全長33.9cm、1オクターブのフレットからブリッジまでの下半分の長さ16.8cm。

 第4弦の全長34.1cm、1オクターブのフレットからブリッジまでの下半分の長さ16.9cm。

 完全ではないけど、ほぼ半分じゃん。弦高をかな~り下げたことで、押さえたときの「たわみ」がほとんどなくなったからだろうなあ。まあ、これならわかりやすくていい。

 

 

 ところで、クリスマスプレゼントにもらったとき、ピックも2枚もらったんだが、小さいし、猫たちにおもちゃにされてどこかにすっ飛んでいきそうで、最初はプラスチックのケースに入れてた。それでもよかったんだが、やや大きすぎるし風情がない。で、思いついたのがこれ。

 

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 大きさピッタリ! しかもかわいいw まあ蓋がぴちっとはまらないので、持ち歩きには向いてないけど、普段机の上に置いておくには充分。これ、亡くなった祖母が持っていた茶道道具にあった、お香入れ。なんか和風でかわいいし、誰かにあげてもいいなと思ってもらってきたんだけど(棗?とかいうらしいのと一緒に)、こんな使い道があったとは。

 

 というわけで、マンドリン練習、これからさらに気合入れて頑張りますw