どこかで聞いたようなタイトルだけど。と調べたら芥川だったので、たぶん借りても大丈夫。
こういう時事的な話題を出すのは、あまり私のスタイルではないんだけど、この事件、我が町でえらい話題になっているようで、掃除のおばさんがうちに来るなり持ち出し、友人たちも朝のトレーニングに参加したら先生がなんか言ってた、というくらい大きな問題になっている様子。で、記事を読んだら、もうツッコミどころが多すぎて、吐き出さないと腹膨るる心地なり、だったので、書かせてください。
主に参考にした記事はこちら。
まず、事故が起こったのはこの町の人ならだれでも知ってる、「目抜き通り」にある交差点。3本の道路が互いに交差して、真ん中の小さな三角が公園になっている。そこに、クアウテモック*1の銅像が立っている場所。
グーグルマップから借りました。お天気悪いなー。
この立ち位置の右手に、Fedex(宅配便)の建物がある。その角に、日曜の昨晩10時過ぎ、30代の女性とその子供たち二人が立っていた、もしくはちょうどそこを歩いていた。家はこの近くだったというので、帰ろうと歩いていたのかもしれない。子供たちは、7歳の息子と10歳の娘という記事と、17歳の息子と10歳の娘と書く記事があって、どっちが本当かわからない。昨晩の段階で流れた情報では、大人二人と子供一人とあったから、息子は17歳のような気もする。
どちらにしろ、この親子三人がいるところへ、巡回中のパトカー(ピックアップトラックタイプ)が突っ込んで、三人は壁にたたきつけられて即死。運転していた警官は、大音量でイヤホンの音楽を聴きながら、飲酒運転をしていたという情報もあり、スピード出しすぎだった。繰り返します、事故を起こしたのは仕事中の警察ですよ?
上記記事によると、パトカーは別の成人カップルが乗った車とぶつかってコントロールを失い、角の建物に激突し、三人を殺したとのこと。
さて、事故を起こした警官は、同僚の助けを借りてその場から逃走。周辺住民から事故の知らせを受けて、警察が現場に駆け付けたのは40分後。言っておきますが、目抜き通りなんて言葉がちゃんちゃらおかしいくらい一方通行の狭い道がメインストリートのこの町、しかも日曜の深夜、現場は町の中心部から5分のところ。どんだけ時間かかってんだって話ですよ。
その時点で、事故現場を取り囲んでいた住民たちはあまりのことにすでに怒り狂っていたようで、そこに駆け付けた警官たちは不運だったとも言えるけど、警察へのうっぷんが溜まりに溜まっていた住民たちは、その警官たちに石を投げ、うち一人が現在重傷を負って入院中*2。
だいたいメキシコの警察は、「警察を見たら泥棒と思え」というくらい信用ならないです。いや、きっと大半のおまわりさんはいい人なんだ。でも一部の腐敗したやつらが、麻薬組織とつるんでいたり、何しろ拳銃を持っている(メキシコではそこらを歩く一般市民は銃を携帯していません)うえに権力とつながっているから、何かあったら一般市民は太刀打ちできない。「近寄らぬが仏」ってもんです(いろいろ諺間違い)。
そんななかで、特に地方の小さい町や村では業を煮やした住民たちが自警団を作って武装していたり、こんなふうに事件が起こると警察に任せておけなくてリンチとかしちゃったり、まあ最近は特によくそんなことがメキシコ中で起こっていたので、こののんびり平穏な田舎町でも、そうなっちゃうかな……。でも怪我したおまわりさんは(それが本当だったら)個人的には悪くないので、かわいそうではありますが。
一夜明けて、警察の発表によりますと、事故現場からは短銃2丁と長銃1丁がなくなっており、ただし長銃のほうは近くの住居の屋根の上で発見されたとのこと。つまり、短銃2丁は見つかってないのね……。
また警察は、重傷の警官を攻撃した人物を必ず見つけ出して逮捕する、と宣言。すでに逮捕者が一名出ている様子。あの~、それはいいんだけど、事故を起こして逃げた警官は見つかってるんでしょうか??? そっち逮捕するのが先じゃないの?*3
この事件、あまりにもメキシコ的な要素が凝縮されているなあと感じたので、書き留めておきたくなりました。
警察が飲酒運転とか、警察がスピード違反とか*4、そういうことは、わりと普通だし、私も別にやいやい言う気はない、事故さえ起こさなければ。警察だって人間だもの。
でも、それで無辜の市民を、子供を、殺しておいて、現場から逃走するとか(まあ警官だって人間だし、とっさに怖くなって逃げちゃうのをことさら責める気はしないけどさ、でもやっぱりダメでしょそれ)、しかも警察が逃走を補助してるとか、さらには警官が怪我したのを許さないと逆ギレするとか、もういろいろいろいろね。
で、この事件を聞いた私たち在墨邦人3人娘(嘘。トウの立ったおばさん三人)の結論は、
「警察信用したらダメだね。まあ元から信用してないけど」
でした。
亡くなった親子3人、本当にお気の毒です。人生、いつ思いがけず終わるかわからないね。ということを骨身に叩き込まれているメキシコ人に、また一歩近付いてしまった気がします。