気まぐれエッセイ@メキシコ

不定期に適当な文章をつづっていきます(現在バヨ中心)

キューバ人作家のバヨ短篇

 うわあ、気が付いたらもう10日も更新なし! ブログタイトルが「気まぐれ」だから、という言い抜け道はありますが、今週はレッスンが先生都合でキャンセルと なり、それでも適当になんか書こう(まあだいたいはビブラート関係だけど)と思ってはいたんですが、イグアナベビーもらっちゃったりしてそっちに忙しく、ついずるずると。

 

 練習はちゃんと毎日やってます(あ、一日だけサボりました、ガレージの天井から水漏れがあり、調べてもらったら私の部屋のクーラーが原因で使えなかった日だけ)。が、イグちゃんも気になるし、読みたい本も山積みだし……自分が5人くらいいたらいいのになあw

 で、ちょっと手ごわかった旧仮名の日本文学を読み終えた昨日、次はヘルタ・ミュラーにしようか、それともキューバ人作家の長編読もうか、と迷ってて、キューバ人作家の本はこれ。アルマンド・ルーカス・コレアの『ドイツ人の女の子』。

 日本語は出てないのかな。第二次大戦当時、ベルリンからキューバへ亡命した人たちの話みたいです。

 これを買ったのはもう2、3年前で、ダンナの誕生日プレゼントにという名目で、実は自分が読みたかったw 最近ふと思い出して、ダンナに読み終わったか訊いたら、読んだというので奪い取ってきました。

 買った当時はキューバってメキシコから近いけど、私には接点がない国だったんですが、今のバヨ先生がキューバ人なので、身近に感じる。そう言えばこないだ、ふと本棚に『キューバ人現代作家による短編集』というスペイン語の本があるのを見つけて、こんなんいつ買ったっけ、と思いながらも、バヨ先生のことを考えちょっと引っ張り出したこともあり。あの短編集に、このコレアの作品入ってるかもと思って、昨晩また出してきました。

 ベラクルス大学出版の本で、確かこの町の大学(小さい町だけどなぜか大学があります)の本市で見かけて買ったと記憶。メキシコ関係の本ならそういうところで買ったのが数冊あるんですが、キューバってなんでだろ? 

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 最後についてる目次(綴じ目が剥がれちゃってたのでテープで修繕もして)を見てみましたが、コレア氏は含まれず。35人各1編入ってますが、知ってる名前も一つもないなあ、そもそもキューバ文学で知ってる人っていないかー、とウィキで出てくる名前と見比べたら、さすがにいくつかは被ってましたね。

キューバ文学 - Wikipedia

 

 目次をざっと眺めたところで、読むのはいつになるかなあ(その日が来るかなあ)と思いながらぱらぱらとページを飛ばしていたら、ふと目についたタイトル。

  SOLO DE VIOLIN Y VIEJO    Ricardo Ortega

 やっぱりバイオリンという単語には反応しちゃうw 8ページだったので、昨晩読み終えてしまいました。最後まで読んでみたら、そこに2001年6月27日と読み終えた印の日付書き込みがありw あ~、これが読みたくて買った本だったのか? でも読んだ記憶はまったくなし。当時の日記にも何にも書いてないし……。読んだけどよくわからなかったか面白くなかった?

 でもそんな先入観なしに(記憶欠如ともいう)読んだ今回は、これがけっこう面白かったのですよ!!

 

 リカルド・オルテガ、1956年サン・ホセ・デ・ラス・ラハス*1生まれ。彼の短編は当地の新聞に掲載され、著作『五月の魔女たち』は出版準備中(1989年に出版されてます)。この作品はその本に含まれる。とのことです。

 詳しいプロフィール、探したらありました。スペイン語だけど。

ecuadmin.ecured.cu

 で、ここからが本題です! タイトルは(訳しにくいけど)『ただバイオリンと老人のこと』、まあ普通に『バイオリンと老人』でもいいかも。

 日本語に訳されることはまずなさそうなんで、詳しくあらすじ書いていきます。

 

 冒頭のエピグラフ

老人とは常に夢見る子供である。(ホセ・ソレル・プイグ「夢見るパン」より)

 

 離婚した母親と一緒にごちゃごちゃと汚ないアパートに引っ越してきた少年が語り手。庭もなくパパもいない、片腕が不自由な少年をじろじろ眺める感じの悪い人ばかりの団地。少年のアパートの、一階に住んでいるのはよそで働いているので「ほとんどここにいない夫婦」、二階に少年と母親が住み、三階にはラモーナとエウセビオというカップル、そして四階には外国人の老人が越してくる。ここらで唯一の緑は、この老人がベランダに置いたたらいに生えているシダだった。そしてもう一つのたらいにクジャクガメ*2、籠でいつも寝ている黄色い猫とバイオリン(これだけ揃うと、他人事とは思えないw)。

 老人に関する噂はいろいろあって、有名で金持ちなバイオリニストだったのが落ちぶれたとか、出身はフィンランドとかポーランドとかオーストラリアとか……。しかしスペイン語がちょっとおかしいので、キューバ人でないことは確かだった。夕方になるとベランダでバイオリンを弾いた。

 新しい生活になじめない少年は、ある日この老人が建物の前のスペースに花壇を作ろうとしているのに声をかけて手伝ったことから、親しくなる。母親は嫌がるが、少年は気にせず通う。老人のバイオリンは魔法のようだし、話も面白い。数学の宿題を手伝ってもらったりもする。

 しかし他の住人たちは老人に苛立つ。たらいのシダが落ちて、下のベランダのテレビアンテナを壊し、球技(と言えばサッカーと思う私はもうメキシコ人だが、キューバでは野球)を見ていたエウセビオが怒る。老人は、じゃあ今晩は彼をなだめる曲を弾こうと言う。エウセビオは野球を見ながら眠り込み、かつてピッチャ―だった自分が大活躍する夢を見た。

 老人の猫が日曜のためのステーキ肉を盗んだとラモーナが怒る。じゃあ今晩は彼女が猫を許してくれるように弾こう、と老人。ラモーナは翌日、あの猫と手に手を取ってベランダの手すりで踊りまくってる夢を見たよ、とこぼす。今度は少年の母が、カメの水が臭いと怒る。では君のお母さんに彼氏ができる演奏を。魔法みたいだね、と少年、魔法なんだよ、と老人。

 しかしそのうち、生活に追われてそこら中ゴミだらけのアパートで、みんなが怒りだす。こっちはあんたみたいに優雅な引退生活をしてるんじゃないんだ、そういつもいつもバイオリンを鳴らされちゃたまったもんじゃない。老人はすっかり意気消沈し、少年の慰めも受け付けない。その夜少年は、老人がバイオリンを弾きながら、シダのたらいがぐるぐる回る回転木馬になったのに乗って、猫やカメたちも連れて空へと昇っていく夢を見る。翌朝、シダのたらいは3階のベランダに、猫はラモーナの台所の鍋の中で寝ていて、カメは少年の家の洗濯機のなかにいた。そして老人は建物の前に倒れていた。

 老人は病院へ担ぎ込まれ、少年は心配ないよと見舞いで告げる。猫はラモーナが餌をやってるし、エウセビオはシダのたらいをアンテナの横にくくりつけた。お母さんは僕がカメを中庭に置くことを許してくれた。

 しかし老人は病院からアパートへ戻ることなく、そのままホームへと入居した。それでも少年は毎週訪ねていき、いつか大きな家を買ったら老人を引き取って一緒に暮らす計画を立てる。庭もきれいにして、結婚して子供ができたら老人をおじいちゃんと呼んで、いくらでもバイオリンが弾けるように。

 そしてそのときは、老人と知り合った最初の日と同じようにいい気分で別れたのに、今はこの荷物と一緒にどうやって家に帰ったらいいのかわからず途方に暮れている。施設の人が僕を呼んで、老人がもう僕を待ってはいないことを告げ、そして渡してくれたこの荷物を抱えて、僕はあのアパートへと帰っていかなくてはならない。

 この団地では何も変わっていなくて、ただ僕のアパートの住人たちだけが、コンクリの上に土をかぶせて植物を世話したりしている。1階の「ほとんどいない」人までが参加している。ラモーナとお母さんは雑草を抜いている。それぞれ、手を止めずに、でもイヤな顔ひとつしないで。ここの、朝から晩まで続く騒音について、僕がどう思ってるか、みんなが知ったらどうだろう? 申し合わせたように、朝には次々と目覚まし時計が鳴り、5時、5時半、6時、みんながベッドから飛び起きて、流しの水の音、トイレの音、コーヒーメーカーの蒸気が噴きだす音、洗濯機がごとごと鳴り、扇風機が回り、カップが音を立て、オーケストラ、シャワー、圧力鍋、ロックグループ、熱いバターでじゅうじゅう焼ける肉。家具を好きなだけずらすといい、壁に釘を打ち、喧嘩して怒鳴り合い、そして僕に、夜に鳴り響くこのバイオリンは我慢できないと言えばいい。僕はみんなに対抗する、この、残されたバイオリンで、僕のいいほうの腕で抱えているこのバイオリンで。

 

 

 長くなりました。訳し始めるとどんどん、ここもあそこも、と訳したくなって、いっそ全部訳しちゃったほうが、と思ったりw しかしそういうわけにもいかないので、それなりに端折って、最後の段落だけはほぼ逐語訳です。わかりにくいところもあるかも……ごめんなさい。一読目ではちゃんと読み取れてなかったところとかもあり、某所に書いたあらすじとちょっと食い違ってるところもあります。少年が、最初は周りのみんなから孤立して頑なだったのに、最後には今の生活を受け入れてる感じも、もっときっちり訳さないと伝わらないと思います。

 前半の、バヨ演奏がみんなに夢を見せるところとか(他にも、雨がなかなか降らないときは降らせるとか、皇帝や貴族を泣かせたとか、ジャングルで裸のインディオジャガーたちが聞きほれたとかのエピソードも)、絵本にしたらステキだろうなと思わせるシーンがいくつもあり、でも後半はなかなかに現実的で厳しい展開に。

 

 そう言えばバヨ関係の絵本でこんなのもあり、

 私はこれ、日本語だと高いので英語版を買って読んだんですが(絵本なので、文は少なくて、私でも読めるレベル)、これ子供向け?とちょっと不思議に思うくらいのところもあり、こんなのあるんだから、このオルテガ氏の作品も絵本でいいんじゃないかな? だれか、絵を描いてくれないかなあ……。

 

 

 

*1:まったく知らなくて調べたら、西寄りにあるマヤベケ州の州都、人口は8万弱とのこと

*2:Jicoteaとあるので、いわゆるスライダー類、アカミミガメとかクジャクガメですが、キューバだからまあクジャクガメということで