気まぐれエッセイ@メキシコ

不定期に適当な文章をつづっていきます(現在バヨ中心)

ヘビ・ア・ラ・カルト(3)

 さて、ヘビは攻撃的か? というお話をします。

 メキシコだったら、覚えきれないくらいヘビの種類があって、その中にはヤバい毒蛇もいるので、さすがの(?)私もヘビを見つけたからと言って即手を出したりはしない。というかそもそも、ほとんど見かけない。カンペチェという州の名前はマヤ語で、カン(Can)がヘビ、ペチェ(正確にはPech)がダニという意味だそうで、ヘビとダニが多いからというんだが、ダニは確かに多いけどねえ……。ヘビはヤバいので、人間の居住区からは排除されているのかも。

 でも日本なら、沖縄のハブは攻撃的なうえにヤバいくらいの毒を持っているので気を付けないといけないけど、それ以外のところなら、マムシさえ見分けて避けることができれば、ヤバいやつはいない。マムシだって、噛まれてすぐ死ぬほどの毒じゃないし*1、よほどでない限り向こうから噛みついてくることはない。

 私が子供のころは、ヤマカガシは首に毒があって、噛みついた動物がひどい目に合うという話は知っていたけど、私はヤマカガシの首に噛みついたりはしないので関係ないと思ってた。最近では、牙にも毒があるってことになっているのか……。でもヤマカガシも何度も関わり合ったことはあるけど、攻撃されたことはないので、基本、よほど運が悪くなければ大丈夫だと思うんだがなあ……。

 

 山を歩くときは、長靴をはく、できれば棒で先の草むらをがさがさと掻き分けながら歩く、というのがマムシよけの知恵だった。

 一度、弟が虫取りに熱中していたのだったか、朝4時くらいにクワガタとかカブトムシを取りに行こう! と言い出して、親にも一応許可をもらって、私と弟で行くことにした。わくわくで眠れなかったらしい弟に3時くらいに「ねえ~もう行こうよ」と叩き起こされて、眠いのに~、と思いながらも起きだし、長靴と棒(捕虫網ね)で装備して山へと出かけた。

 片手で棒を持ってがさがさ、もう片方の手で懐中電灯を持って照らしながら歩く。ときどき、草のなかでぴかっと何かが光る。それがマムシの目だと親からは教わっていたけど、朝露も交じっていたかも? でも、襲われることはなかった。それよりも、しばらく夜中の山道を歩いてたら、後ろからがさがさと足音がする!? え? 誰かいる? 弟と二人でびくびくと後ろを振り返り、追いつかれないようにスピードを上げると、向こうも早足になる……。あのときのほうが、ヘビよりよっぽど怖かったわw まあ結局、家を出た子供らを心配して追いかけてきた父親だったんですけどねw

 

 そして、ヘビを捕まえるには、後ろから手を伸ばしてさっと首元を捕まえる。持ち上げるときは、首を折らないよう、体を支えてやること。腕に巻き付けると、なおよし。前の記事のカラスヘビの写真、ああいう持ち方がよいとされていた(はず)。

 腕に巻き付けたら、ヘビはだいたいおとなしくなる。首や胴体を強くつかみすぎたりしなければ大丈夫。ヘビはぬるぬるしてると言って嫌う人がいるけど、それ両生類と間違えてるから。ヘビは(うろこがざらざらの種類も世界にはいるらしいけど)日本のはたいていすべすべのつるつる。うろこを逆なでしちゃダメよ? それはヘビにも人間にも大変不快ですので。

 もう長年ヘビを抱っこしてないけど、まだ覚えてる。子供のころはあの感覚が好きだった。まさに筋肉の紐。うねうねと動くその力強さが直接伝わってくる感じ。きらきらと輝くうろこ。シマヘビやアオダイショウの頭の形。後年、ドイツでクサガメを飼い始めたとき、カメの顔にすごく親近感があって、なんでだろうと考えたらヘビと同じ形なんだよね。やっぱハチュ仲間だから。

 特に好きだったのがシマヘビで、あのベージュの地に焦げ茶の縞が四本の色合いのシックさ、色の配分のバランスの良さ、そしてオレンジ色のつぶらな瞳。こんな美しいヘビが他にいるだろうかと、うっとりしてた。そりゃ図鑑を見れば世界にはびっくりするような美しいヘビが他にいくらでもいたけど、日常で目にする本物の美しさにはやっぱり勝てないんだよなあw あのころは、ペットとして外来のヘビを売ってたりする世界とは無縁だったし。ヘビと言えば(いや、どんな動物でも犬猫以外は)山で取ってくるものだった。

 

 で、ヘビと見れば(マムシ以外には、マムシだけは絶対ダメと親から厳命されてた)駆け寄っていた私だが、ヘビから攻撃を受けたのは、2回のみ。

 どっちのケースが先だったか覚えてないが、たぶんシマヘビの赤ちゃんが先かな。どこだったか、普段行かないようなところにお出かけして、緑のフェンスがあったんだが、そこにシマヘビが巻き付いてた。それが、見たこともなかった小さな赤ちゃんだった。頭の大きさは大豆くらいかな? でもくっきりとあの美しい縞があって。あまりのかわいさに感動して、ヘビをつかむときのセオリーをすっぱり忘れて正面から手を伸ばしたら、そのヘビがシュッと動いた。え? と思ったときにはヘビは元の位置に。フェンスに絡まって、頭を軽く揺らしている。

 で、右手人差し指の横っちょを噛まれてたw ぜんぜん痛くはなかった、気がする。プチッと四つ、小さい穴があいて、ぎゅっと横を押さえたら血が丸くしずくになって出てきた、そんな程度。

 前から手を出したのがそのとき一回きりだから、ヘビは前から来られると必ず噛みついてくるものかどうかはわからない。でもこんなにきっぱりやられたのは本当に初めてで、もう笑っちゃって、しかもこんな小っちゃい赤ちゃんが! てことで、その勇気に免じて、その子は捕まえるのをやめにした。

 

 ちなみに私、動物を飼うとき、よく知らない動物だと、一度は噛ませる。もちろんそれで指食いちぎられるとか毒があるとわかってるのはやらないよ? でも大丈夫そうだなと思ったら、やる。ちなみにタラちゃん(タランチュラ)はやってないw 猫に噛まれるくらい痛いと本に書いてあったし、猫になら噛まれたことあるので(これは噛ませたんじゃなくて偶然だけど。またこの話もいつかw)。

 クサガメにも噛ませてみた。インコとかもやった。たいてい、飼い始めて間もないと、人間の指を食べ物かなと思って食いついてくる。かなり本気で噛んでくる。その痛さを体験することで、このくらいの痛みは与える力があるんだな、とこちらが覚悟して今後付き合える。動物のほうも、一度思いっきり指に噛みついて、あれ、食べ物じゃなかった、と学習してくれる気がする。それからは、噛むにもそうっと遠慮がちに噛んでくれるようになる(場合が多い、気がする)。

 イグアナも、すっぱり切れるの知ってたからやらなかったけど、こちらは事故で複数回やられましたけどねw これはまた別。

 

 さて、ヘビに話を戻して。攻撃された2回目の経験は、いつも行く山のてっぺんに大きな池があって、よくそこで釣りをしたりしてた。釣りに飽きて、その辺を歩いていたらヘビがいた。何ヘビだったか、ちょっと記憶から抜け落ちてる。まあ1メートルくらいの、中くらいのヘビだった。あ! と思ったときは向こうも気付いて、私の胸の高さくらいの木の枝を伝って池のほうへ逃げようとした。私は、足場が悪かったし、それ以上向こうに行かれると池になってしまうので、逃がすか!!ととっさに尻尾をつかんじゃった。

 そしたら、怒ったヘビがぐるっと向きを変えてこっちに噛みついてきた! んだが、ヘビの体は木の幹を回ってU字型になってしまってて、尻尾を引っ張られているので、頭が私まで届かなかったw

 私は足場の悪いところで片手を伸ばしてヘビの尻尾つかんだ状態、ヘビはU字状態でこっちをにらんで硬直してる。これ、尻尾放したら飛びついてくるよね? でも尻尾を引っぱって頭を遠ざけることはできなかった。ヘビの筋力、侮るなかれ。

 えーと、どうすればいいの、これ、って状態になって、ヘビとにらみ合うこと30秒くらいだったかなあ、もっと長かった気もする。でも、どうにもできないよね。手を放すしかない。放すと同時に後ろへ飛びすさる、とかできないくらい足場悪かったし。しょうがない、噛まれる覚悟で手を放しました。そしたら、ヘビ、ふっと全身の力を抜いて、ちょっと迷ってから、向きを変えて池のほうへするすると行ってしまった。

 許してくれてありがとう、ヘビ。

 

 つまりこのときも、悪いのはもちろん私で、尻尾つかむなんてアホなことしなければヘビの攻撃性を誘発することはなかった。

 だからね、山道でヘビを見つけても、悲鳴を上げて逃げ出す必要なんかないんですよ。ヘビのほうが(悲鳴は上げたくとも上げられないが)逃げる側なんだから。10メートルのボアに出くわしたとかいうなら、まあ話は別だけどもさw

 

 そういえば私の子供のころの理想の死に方ってのは、アマゾンで大蛇に呑まれて死ぬことだったなあ。まあ呑まれる前にばきばきに押しつぶされて死んでるかもだけど、ミクロの決死隊みたいにヘビのお腹の中を見ながら死にたいって、あれ? これ、ムツゴロウさんがどこかに書いてたんだっけな。

 まあでも、実際にいちばんありそうな私の死に方は、地震で倒れてきた本棚につぶされて圧死だな、と友人たちの意見は一致してたw どっちにしろ、畳の上で大往生とは行かないよね~、と言われてたけど、さすがにこの歳になってくると、そうでもないんじゃない? 割と普通に病気とかで病院か自宅のベッド(畳はないから)で死ぬんじゃないかなという気がしてる。もう、アマゾンに冒険に行ける歳でもないしな~。

 あ~でも子供のころは、自然科学が博物学だった時代にあこがれたな~。今の生物学(というか私が大学で生物学をやった30年くらい前)は、細胞学とか遺伝学とか生理学とか、とにかく細かい。そういうのも理論としては面白いし、生命の神秘を探るわくわく感はあるんだけど、やっぱりなんかアマゾンに分け入って、見たこともない動植物に取り囲まれてみたい。んで、未開民族に見つかって頭の皮剥がれてもいいw 干し首にされたりw 

 思うばっかりで実現は難しいかもだけど、でもこないだ、ここで知り合った日系ブラジル人のお母さん(日本人一世)がブラジルから遊びに来ていて、親しくなって、ブラジルにお帰りになるときは「いつか遊びに来てね~」と(社交辞令も多分に混じっているとはいえ)言われて、その一週間後くらいに、ブラジルには黒いグリーンイグアナがいると知った。写真を見たんだけど、これがめっっっっっちゃカッコええ~~~!! すごい、何これ~~! ブラジル行きたい!!熱が再燃w

 まあ友人のお母さまは爬虫類見たら卒倒するタイプだそうでw、そんな黒いイグアナがどこに行けば見られるのか知らないけど……と言いつつ、なんかそっち方面(ブラジルと言っても広いからねえ、何とか州って場所だった)に行くツアーみたいなのはあるかもねえ、と。観光客向けツアーでは無理だろうけど、ブラジルには物好きな人向けの冒険ツアーみたいなのはあるらしいので、もしかしていつか……とまだ夢見ておきますw

*1:もちろん、子供とか危険な場合もあるので軽視を推奨するつもりはありませんが